あなたとホテル
真綿で首をしめられるとはこのこと。
彼が示し続けた優しさと保護。
危険なストーカーから身を守ってくれたわたしのナイト。
どうして出てきてはくれないんだろう?。
私を安全な場所へ避難させ、そしてどこかへ消えてしまった。
これがどんなに残酷なことか。
ならばいっそストーカーの手にかかった方がマシだった。
けれど、鈍感なわたしはやっと実感した。
そうか、例えば何気なく買い物に行くときも、自転車で飛ばしてたあの時も、望遠鏡とかで見張られていたんだ。
家には盗聴器がしかけられ、私が他の男のものになってやしないかと寸断なく見張られていた。
もし、あの頃誰かと、例えばあなたとホテルかなんかにしけこんでたら?。
家なんかとっくに探知されてたんだし、私は自覚に乏しいしで、ある日お陀仏。
ピンポーンとかベルが鳴って、はいってドアを開けたら、はいそれまでよって感じ。
わたしが持ってなかった感情をぶつけられたのだ。
それは異性への憎しみ。
理解できなかったし、実感できなかった。
人が殊に男性が、自分にそこまで執着する実感は未だにどうしてもつかめない。
どれだけの確証を突きつけられても、すべては他人事。
それが私という女性。
今になって気づくなんて遅い。
愛とはなんて儚い代物なんだろう。
気づいた時はもうこの手の平から羽ばたいて遠くへ行ってしまってる。
手の届かないところで、別な幸せを見つけて別な人生を歩んでいる。
それを祝福すべきなのは分かってる。
理解はできても心は苦しい。
わたしは馬鹿だった。
でも、しょせん人の心は水物。
流れてしまった川の水を掬い取るなんてこと、できないんだから。